せめてものグッバイ

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AIにはない「相談することの本質」とは

AI(人工知能)に恋愛相談ができるサービスが始まるらしい。

mainichi.jp

高度なコミュニケーションのひとつである「相談」もAIがやってしまうとなると、人間の価値ってなんだろうということを考えざるを得ない。

 

人間のカウンセラーとかコンサルとかの仕事がAIに取って代わってしまうのではないかという問いが可能だけれども、この相談ができるAIに限って言えば、決して人間を超えることはない。

 

「相談することの本質」が、AIには抜け落ちているからだ。では、「相談することの本質」とはなんだろうか。

 

AIによる返答は、

 

当面、回答は蓄積された回答データからの引用で構成するが、将来的にはAIが独自に生成することを目指す

 

とのこと。

 

これはつまり、そもそもの回答は人間がつくっているということになるので、AIによる悩みへの返答がパターン化されていくことになる。この質問にはこう、あの質問にはこう答える、といった具合だ。AIがコメントを独自生成することになってもパターンが細分化されていくだけのことだ.。

 

相談の内容は、「恋」「仕事」「人間関係」がほとんどを占める。むしろ、この3つ以外の悩みがあるだろうか。

 

だからこそ、悩みも返答もある程度のパターン化が可能でAIにも回答ができる。

 

人への相談はきくふたつに分けられる。解決策がある悩みと、解決策がない悩みだ。

 

弁護士に対してする法律相談や、経営コンサルタントに聞く助成金の申請実務などは、相談者が問題を解決したいと考える部類の相談だ。

 

これには明快な答えが存在する。法律相談などは法律がベースにあるので一定の解答が可能だ。弁護士によって返ってくる答えが異なることがあるが、それは個人の力量や経験の違いによるものであって、基本的には六法や判例に答えが書いてある。

 

一方で、

 

「人間関係がうまくいかない」という相談に対して返す答えに100点満点の答えや解決策など存在しない。相談内容によっても返答は変わるし、相談された側の人生経験によっても変わってくる。あくまでも、解決できる可能性の高い返答しかできない。絶対人間関係がうまくいくとか言っているカウンセラーがいたら、そんなものはニセモノだ。

 

人生相談には答えがない。相談された側が示す解決策も、あくまでも解答例でしかない。

 

また、恋や仕事の悩みなどのいわゆる人生相談は必ずしも解決策を必要としていない。だからこそ、ただ話すことによって満たされている側面がある。特に女性はその傾向が強い。

 

したがって、相談なんてものは「どういう答えを得るか」よりも「誰に相談するか」によって、相談の満足度が決まってしまう。100点の解決策などないのだから、コミュニケーションとして満足するかどうかが問題なのだ。相談する側もそれを意識的か無意識的かに関わらずそれを理解している。

 

あなたもきっと、相談する人を選んでいるはずだ。誰かれ構わず相談はしないだろう。

 

会社を赤字から黒字に立て直した社長からの「人生、なんとかなるよ」は深みがあるが、職歴もないニートからの「人生、なんとかなるよ」はただ腹が立つだけだ。

 

相談される側が持っているストーリーこそが返答よりも重要なのである。

 

AIには、このストーリーがない。人生がない。

 

ただ話を聞いて欲しいという需要には応えるかもしれないが、人間に相談する際の満足度を超えることはないだろう。

 

ジェーンスーとAIのどっちに相談しようかで迷うことなどあるわけないのである。 

ジェーン・スー 相談は踊る (一般書)

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