人の行動を操りたいなら「禁止」するより「感謝」する
トイレでよくみかけるこの貼り紙。
「いつもきれいに使っていただきありがとうございます」
こう言われると、きれいに使わないといけないんじゃないかという気になりますし、「感謝までされたんじゃあ、汚く使うわけにもいかないなぁ」という気持ちも生まれます。
でもよく考えると、今その貼り紙を見ながら用を足しているのですから、「実際に」きれいに使っているかどうかは別にして「ありがとうございます」と感謝しているわけです。
「今きれいに使用しているあなたへの感謝」ではなく、「過去に綺麗に使ってくれたことへの感謝」なのです。
つまり、過去に綺麗に使用したのはあなたかどうかに関わらず、過去の綺麗な使用を言及することで、今使用しているあなたに対して綺麗に使わないといけないという心理を生み出しています。
この感覚、ちょっと不思議ですよね。
人は期待されている役割を演じようとするバイアスが働きます。この貼り紙を見た人は、「トイレをきれいに使用すること」が期待されていると認識します。
すると、自然と「きれいに使用するようになるのです。よっぽどのあまのじゃくではない限り、あえて汚く使おうと思う人はいないでしょう。
これがたとえば、「トイレを汚すな!」と書かれていたらどうでしょう。さきほどの貼り紙とは異なり、「今まさに使用しているあなた」に向かれた言葉です。
こう言われると、ちょっとムッとしませんか?汚くするつもりもないのになんでそんなこと言われないといけないの?という気持ちになったとしても無理はありません。
さきほどの「いつもきれいに使っていただきありがとうございます」は、「行動を先回りした感謝」です。
きれいに使ってくれることを前提としてしまっているのです。
人を思い通りに動かすためには、単純に禁止するよりも「行動を前提にして伝えてしまう」が効きます。
ここにゴミを捨てるな!
よりも、
持ち帰っていただき、清掃スタッフ一同、感謝申し上げます。
きれいにしないとダメでしょ!ちゃんとかたづけて!
よりも、
かたづけてくれてありがとう!きれいになると気持ちいいね
まさに、ものは言いようです。
この考え方は、コミュニケーションだけでなくマーケティングにも応用できます。