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マツモトキヨシ「21号店」のマーケティング戦略は2つの心理効果を使って大成功

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突然ですが、ドラッグストアのマツモトキヨシの1号店はどこにあるかご存知でしょうか。

 

実は、全国どこを探してもマツキヨの1号店は存在していないんです。

 

1号店といえば創業がはじまったところなので、お店にとっても重要な意味を持ちますよね。それなのにどうしてマツキヨには1号店がないのでしょうか。

 

探ってみるとそこには、人間心理をうまく利用したマーケティング戦略が隠されていたんです。

 

マツキヨに1号店がない理由

業界トップの売上高5100億円を誇るマツモトキヨシ。創業は1932年(昭和7年)と、もう80年以上も前です。いまや泣く子も黙るドラッグストアに成長しました。マツモトキヨシ♪というリズミカルなフレーズで終わるテレビCMもおなじみですし、あの黄色い看板を知らない人はいないでしょう。

 

創業店は千葉県柏市に置かれました。本来であればこのお店が「1号店」なのですが、のちに松戸市長も勤めた創業者の松本清氏は、この柏のお店を「21号店」としたのです。

 

「1号店」ではなく、いきなりの「21号店」です。

 

とても一番最初のお店だとは思えないですよね。だって21号店ですから・・・。お店が増えるごとに数字が増えていって、21店舗目に21号店と名付けるのが一般的な感覚でしょう。

 

でも、マツキヨは最初から「21号店」なんです。

 

マツキヨができた当時は、当然のことながらインターネットは存在していません。今ほど情報が流通していない時代ですから、本当に20店舗があるチェーン店なのかどうかなんて知る由もないでしょう。

 

多くの人が、「ここはもう20店舗もある大きなチェーン店なんだなー」と思い込んでしまうのではないでしょうか。

 

私も確実にそう思いますね。 

 

その思い込みこそまさに、マツモトキヨシの狙いだったのです。

 

「みんなと同じ」が心地いい「社会的証明」

20店舗もあるチェーン店だとすれば、信頼性の高い人気店だと人々は判断すします。少なくとも繁盛しているから21店舗目を出店したんだな、と思いますよね。

 

そして実際に「21号店」が繁盛したのでしょう。その後どんどん店舗数が増え、マツモトキヨシは業界トップにまで上り詰めたのでした。

 

マツモトキヨシ躍進の裏には、最初のお店を「1号店」ではなく、「21号店」としたところに秘密が隠されています。

 

「人はなにかしらの行動をするとき、他人がどう動いたのか」に影響される傾向にあります。

 

以前、「人気商品のために品薄で生産が追い付かないドリンク」が話題となりました。これも飢餓感が欲望を刺激し、「多くの人が欲しいと思っているから私も欲しい」という気持ちを生みます。

 

「みんなと同じだと心地がいい」という感覚です。

 

人間のこういった心理は「社会的証明」と呼ばれています。社会的証明はマーケティングにも広く応用されている考え方です。

 

21店舗もあって人気のマツモトキヨシだから、あそこで買おう!となるわけです。

 

行列ができるラーメン店はおいしいお店?「バンドワゴン効果」

「21号店」という命名には、「バンドワゴン効果」というもうひとつの心理効果が隠されています。Wikipediaから引用します。

 

ある選択が多数に受け入れられている、流行しているという情報が流れることで、その選択への支持が一層強くなること

 

要するに「行列が行列を呼ぶ」という流れです。ラーメン店の行列を見るとおいしいお店なんだろうなーと想像した経験はないでしょうか。それが「バンドワゴン効果」です。

 

多くの人が支持していると感じることで、安心や信頼が生まれ、行動につながっていきます。

 

人間は案外、自分で考えて行動しているのではなく、他人に影響されやすい傾向にあります。

 

直近の例だと、コレなんか完全にバンドワゴン効果ですね。

www.asahi.com

 

ふたつの心理効果をまとめるとこうなる

「21号店」→「すでに20店舗もある人気店なんだ!」→「どんなお店なんだろう」→「行ってみよう」←イマココ!

 

もしも単純に「マツモトキヨシ 1号店」であれば、見ず知らずのお店の創業店として認識されるだけで、人々が店名に特別な信頼を感じることはありません。

 

「1号店」→「マツモトキヨシ?聞いたことのない名前だなぁ」→「いつものお店でいいや」

 

お店の中身は変わらないにも関わらずです。店名のちょっとした差であっても、人間心理には大きな影響を与えます。

 

結局のところ、人はその場の「感情」で動くんです。思い込みなんてまさに感情ですよね。人間は自分で思っているほど「論理的」な生き物ではないということです。簡単にころりと騙されてしまうんです。なんとも悲しい性であります。。。

 

そういった人間心理を巧みに利用するとマーケティング戦略に活かすことができます。創業者の松本清氏はマーケティング戦略として考えたうえで21号店としたのでしょうか。

 

調べてみたのですが、「見栄を張って21号店とした」との資料がありました。その見栄が結果として商売繁盛につながるのですから面白いですよね。真相はどうなんでしょうか。とても気になります。

 

ちなみに、柏の「21号店」はもうないそうです。その代わり松戸にある「22号店」が今では「創業店」として認められているとのことでした。

 

以上、人間心理とマーケティングの切っても切れない関係のお話でした。

 

★市役所に「すぐやる課」をつくったそうです★

マツモトキヨシ101の戦略

マツモトキヨシ101の戦略

 

 

*1:出典:Wikipedia